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「パペットマスター」その3
2011-08-28 Sun 23:41
転載SS「パペットマスター」第三回の投稿です。
そして、今回で最終回となります。
ついに憑神の本体と対峙した美影の運命や如何に?
それでは、始まりです。

---

「まさか・・・あれが憑神の本体?」
そう。美影が先程まで戦っていたのは、マリオネット憑神のダミー。
だからこそ、憑神を倒したはずなのに、人形になった人々は何時までも元に戻らず、糸田胡桃も生気を抜かれた後人形にされ、憑神に操られていた被害者の一人だったのだ。
「くっ。ウチとしたことが・・・。早く、早くどうにかせんと」
美影は糸を振り解こうとするが、手足は動かない。
段々と、自分の体が動かないことに焦りを覚える。
「動け・・・。動け・・・っ!」
自分の意志を無視し、両手は肩の辺りまで上がり、足ももう地面に着いていない。
「いやや。いや!、いやぁっ!」
美影の顔に浮かんでいる恐怖の色が、どんどん濃くなっていく。
その時、マリオネット憑神の本体から一本の糸が伸び、美影の後頭部に取り付く。
「あぐぅ!」
美影は突然の激痛に悲鳴を上げた後、体中の力が抜け、だらんと糸に宙吊りの状態になる。
「あ、あぁぁぁ・・・」
後頭部に取り付いた糸のせいで、意識はぼんやりとし、全身に力が入らず、声もまともに出なくなってしまった。
ぼんやりとしていく意識の中で、どうにかこの状況を打開しようと考えている時、突然子供の声が聞こえてくる。

---

「アハハハ!、ドウダッタ僕ノ演技?、凄カッタデショ!」
マリオネット憑神が、子供の人形を通して美影に話しかけてきた。
「オ姉チャンノコト気ニ入ッチャッタ。アノオ姉サンノ体モ、動カシテテ楽シカッタケド、モウ飽キテキチャッテタシ、今度カラハオ姉チャンノ体ヲ使ウネ!」
美影は必死に喉から言葉を搾り出した。
「い・・・や、や」
拒絶の言葉はとても弱々しく、マリオネット憑神をただ満足させるだけのものだった。
「アハッ!、ソンナニ怖ガラナイデヨ!、チャーント生気ヲ一滴残ラズ吸ッタ後ニ、トッテオキノ人形ニシテアゲルカラサ!」
マリオネット憑神の本体から次々と触手が生え、美影の体に吸い付いていく。
「っ!!!」
美影の顔は絶望に染まり、声にならない悲鳴を上げる。
「今度コソ、イッタダッキマース!」
マリオネット憑神の声が部屋中に響くと、美影の体に取り付いている触手がジュルジュルと音を立てて生気を吸い取っていく。
「あぁ・・・、ウチも終いなんやな・・・」
ついに、美影の意志もこの絶望的な状況から抜け出すことを諦めてしまった。
「猫乃。ほんまに堪忍な・・・」
大切な妹のことを思い浮かべなら、美影の意識は閉じていく。

---

しばらく経った後、ジュルジュルと音を立てていた触手の動きがピタリと止まり、美影の体から離れていく、そしてマリオネット憑神が満足そうに呟く。
「プハァッ~!、ゴ馳走様!、ヤッパリ、普通ノ人間ノ生気トハヒト味違ウネ。口当タリモ良イシ、味モ最高ダヨ!、アハハハ!」
意識が無く、虚ろな顔で宙吊りになっている美影の前で、マリオネット憑神はカタカタと笑う。
「オ腹モ一杯ニナッタシ、次ハ、オ楽シミノ着セ替エターイム!」
マリオネット憑神は手足をカチャカチャ揺らしながら、嬉しそうにその場を飛び跳ねる。
「コノママ人形ニ変エテモ良イケド、オ姉チャンノ苦シム顔ト悲鳴ヲ食後ノデザートニシヨット!」
そう言うと、美影の後頭部に取り付いていた針が、マリオネット憑神の本体へと戻っていく。
「うっ・・・」
全身を支配していた針が外れ、美影はぼんやりとだが意識を取り戻しかける。
「ウチは・・・死んだんか?」
美影の意識はぼんやりとしたまま、ぽつりと呟く。
「アハ!、オ姉チャン、起キテ起キテ!」
マリオネット憑神は、美影の目を覚まそうと、糸で美影の手足を無理矢理動かす。
「あがぁっ!?」
関節を無視した動きが原因で、美影の体中に激しい痛みが走り、美影は叫び声を上げる。
「オッハヨー!、ヨク眠レタカナ?」
「ひっ!」
激しい痛みで意識を取り戻した美影は、目の前にいるマリオネット憑神の姿を見て、小さな悲鳴を上げる。
「アハハ!、オ姉チャンノ生気。トッテモ美味シカッタヨ!、ゴ馳走様デシタ~!」
「あ、あんた・・・。ウチをどうするつもりなんや・・・?」
美影はマリオネット憑神に弱々しく質問する。
「オ姉チャンヲ、僕ノ新シイ体ニスルンダヨ!サッキモ言ッタヨー」
「じゃあ、ウチの意識なんて戻さんと、早く人形に変えれば・・・」
「実ハ僕、デザートモ食ベタクナッタンダ!」
「デザート・・・?」
「ウン!、オ姉チャンノ苦シム顔ト、悲鳴ッテ言ウデザートダヨ!」
「なっ・・・!」
マリオネット憑神の言葉に、美影は驚いた後ガクッとうな垂れ呟く。
「ほんまに悪趣味やな・・・」
「アハハハ!、今カラ、オ姉チャンノ体ヲ僕ノ人形ニ変エテ上ゲルカラ、タップリ楽シンデネ!」
マリオネット憑神の本体から、何本もの糸が美影の体に取り付く。
「ジャア、始シメルヨ~」
マリオネット憑神がそう言い終わると、美影の指と足の先の感覚が無くなっていく。

---

「あぁ・・・」
美影は急に感覚の無くなっていく指や足の先を見ると、パキパキと乾いた音を立てて指や足の先が木製に変化していく。
その変化はどんどん全身に広がっていく。
「嫌や!、来んなぁーーー!」
美影は叫び声を上げるが、その頃には両腕と両足の感覚は無くなり木製のものに変化し、肘や膝の部分は人形の関節部のように変化している。
「オ姉チャン。ソノ調子、ソノ調子!」
マリオネット憑神は、美影の変化していく様を楽しそうに見ている。
そして、美影の体の部分にまで変化が達する。
パキパキと音を立てて、美影の胴体と腰も木製のものに変化していく。
「嫌!、嫌!、ひっ・・・、あぁぁぁっ!」
美影は泣きながらぶんぶんと首を左右に振っていたが、首にも変化が始まり、顔を動かすこともできなくなる。
動かせない顔の前には、マリオネット憑神が静かに立っている。
「止めてぇぇぇーーー!、あぁァ、ァ・・・ァ・・・」
美影が絶叫すると、ついに美影の顔も木製の人形のように変化した。
カチャンと音がした後、その場には糸に宙吊りになっている人間大の人形が出来上がる。
美影の意識は無くなり、完全な人形になってしまったのだ。

---

「コレデヨシ。完成ーッ!」
マリオネット憑神の前に、巫女装束を来た人形が立っている。
彼女はこの場所で、人々を助ける為にマリオネット憑神と戦ったが、罠に嵌ってしまいマリオネット憑神のオモチャとなってしまった・・・。
「ジャア、オ姉チャンノ体ハ貰ウネ!」
子供の人形がガシャンと地面に落ちた後、カタカタと動き出した巫女装束の人形は呟く。
「ウチノ名前ハ鈴華美影。アハハ!、アハハハハハ!」

【BADEND】

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「パペットマスター」その2
2011-08-27 Sat 23:23
転載SS「パペットマスター」の第二回になります。
美影は無事、憑神を倒せるのでしょうか?
それでは、どうぞー。

---

「パペットマスター」その2

美影は臨戦態勢を取り、その場で黒い煙が晴れるのをじっと見つめている。
しばらくすると黒い煙が晴れ、そこに現れたのは糸に吊るされた人間大のマリオネット人形。
他の人形同様、愛らしい造形と糸田胡桃の面影は残っているが、両胸や腰には憑神の証の勾玉が埋めこまれている。
その勾玉の禍々しい雰囲気が、愛らしい造形の人形を不気味なものにしている。
そして、マリオネット憑神は、手足をカタカタと揺らしながら動き出す。

---

「ふん。人形の憑神が人形集めやなんて、あんたの趣味最悪やな」
「余計ナオ世話ダ!、オ前モ直グ人形ニシテヤル!」
美影に小馬鹿にされたマリオネット憑神はそう叫ぶと、自分の両腕を美影に向けて飛ばす。
「おっと!、そう簡単にウチは捕まらんで!、よっと!」
向かってきた腕を錫杖で払い飛ばし、美影はマリオネット憑神と距離を取る。
「見えとる勾玉は三つ。一番魔力を感じるのは腰の勾玉。あれが核やな。人形になった人達に被害を出したく無いし、一気に決めな・・・」
美影はぐっと身構え、マリオネット憑神の隙を窺う。
「フフフ。怖イ顔怖イ顔。コレナラドウ?」
両腕の次は、マリオット憑神の髪が身構えている美影に向かって一斉に伸びていく。
「遅い遅い!、って、おわっ!」
美影は向かってきた髪の束を悠々と躱したが、躱した先に有った人形に気を取られ、バランスを崩してしまう。
その隙をマリオネット憑神は見逃さず、伸ばした髪をバランスを崩している美影の方へ再び伸ばす。
「くっ!」
バランスを崩した美影は、伸びてきた髪を避けきれず、一瞬にして体に巻き付かれてしまう。
「アハハハ!、捕マエタ!」
「ふん!、こんぐらいで、ウチを捕まえた気になったらあかんよ!、それっ!」
袖から取り出した札が赤く光ると、腕に巻きついている部分の髪が燃え上がり、そのまま全身に巻き付いている髪だけを燃やし尽くす。
「脱出成功♪、あちちっ!、ちょっと火傷してもうた。失敗失敗」
「クッ!、大人シク生気ヲヨコセ!」
「はいそうですかって渡すわけないやろ!、そっちこそチマチマ攻撃することしかできへんの?」
美影はマリオネット憑神を何度も挑発するが、マリオネット憑神も美影の狙いに気付いているのか、美影との距離を詰めようとせず、遠距離から攻撃を仕掛け続けている。
「ジャア、コレナンテドウ?」

---

美影を捕まえようと部屋中に伸びていたマリオネット憑神の髪が、次々と部屋に飾られている人形達に取り付いていく。
「ちょ。あんたまさか・・・」
美影の予感は的中する。
部屋中に飾られていた人形が一斉に動き出し、美影の方に集まっていく。
「フフフ。オ前ハソノ人形達ヲ傷付ツケルコトガデキナイダロウ?、サァ、ドウスル?」
マリオネット憑神は美影を捕らえる為に、伸ばした髪を部屋中の人形に取り付け、操り始めたのだ。
「ほんまにせこいやっちゃな!、でも、これは正直まいるわ」
美影が苦笑いしてる間にも、人形達はどんどん迫ってくる。
「追い払うだけなら簡単なんやけど、極力この人達を傷付けたないし、どないしよ・・・」
美影が考えている間に、すっかり周りを人形に囲まれてしまった。
「フフ・・・。サァ、可愛イ人形達。ソイツヲ捕マエナサイ!」
マリオネット憑神の合図で、人形達は一斉に美影へ襲い掛かる。
「いたっ!、ちょっと!、もうちょい優しくしてくれへん!?」
美影は諦めたのか抵抗せず、人形達に体を取り押さえられる。
「アハハ!、自信満々ダッタノニ、イイ気味!」
「ウチはあんたみたいな汚いことはしたくなかっただけや」
「ハァ、クダラナイ。タダノ馬鹿ネ。」
「はいはい。馬鹿で結構!、さっさと生気でも何でも吸えばいいやろ!」
「ジャア、オ言葉ニ甘エテ、ジックリト生気ヲ吸イ取ッテアゲルワ」
マリオネット憑神は美影に近づいて行くが、途中で立ち止まる。
「ソウソウ。大事ナコトヲ忘レテイタワ」
マリオネット憑神がそう言うと、美影の側に落ちていた錫杖を、近くにいた人形が部屋の隅へ投げ捨てる。
「くっ」
美影の顔に動揺の色が浮かぶ。

---

「コレデヨシ。アァ・・・、退魔師ノ生気。ドンナ味ガスルノカシラ?」
マリオネット憑神が不気味な笑顔を作りながら、美影の目の前に着く。
「イタダキマァス」
マリオネット憑神の口がパカッと開くと、中からグロテスクな触手がぬるりと姿を現した。
「ひぃっ!?、まさか、それでウチの生気を・・・や、止めっ!?」
美影は抜け出そうとジタバタするが、人形達に体を抑え付けられ身動きが取れない。
そして、触手が美影の口元にまで伸びた時、美影がニヤっと笑う。
「今や!」
「ナニッ!?」
美影がそう叫ぶと同時に、背中から漆黒の羽が飛び出し、抑え付けていた人形達を吹き飛ばす。
目の前にいる、マリオネット憑神の腰に有る勾玉に目掛けて、魔力を込めた掌底を打ち込む。
「これで終いっ!」
マリオネット憑神は反応することもできず、魔力を込めた掌底は核の勾玉を粉々砕いた。
「イヤ・・・、イヤアァァァァァァッ!」
核を粉々に砕かれたマリオネット憑神の叫び声が部屋中に響き渡る。
「ァァァ・・・」
マリオネット憑神は糸が切れた人形のように動かなくなり、その場に倒れ込む。

---

「ふぅ~。イチかバチかやったけど、作戦成功!」
美影は何故か壁に向かってビシッとVサインをする。
「良し。後は後片付けをして撤収や。いや~、それにしても、惚れ惚れする演技力やん。ウチって女優にむいとるかな?」
美影は独り言を呟きながら、部屋の隅に転がっている錫杖を取りに向かう。
「人形にされた人達を吹き飛ばしてもうたけど、大丈夫やったかな?、そろそろ元に戻っても良い頃やし、謝る準備をしとかんと」
部屋の中をキョロキョロと見回すが、部屋中に人形が散乱しているだけで、人の姿は無い。
「おかしいなぁ。憑神は倒したんやし、元に戻るはず・・・うっ!?」
錫杖を拾い上げようとした時、急に美影の身動きが止まる。
「な、なんやこれ?、体が動かへん!?」
必死に手足を動かそうとするが、まったく動かない。
状況を把握しようと周りを見渡した時、自分の腕や足に細い糸が取り付いていることに美影は気付いた。
「嘘やろ・・・」
美影は恐る恐る天井に顔を向けると、驚きの声を上げる。
「なっ!?」
暗い天井の奥から、ずるりとヒトデのような形の巨大な化物が現れたのだ。
化物の体の中心には巨大な勾玉が見え、美影の手や足に取り付いている糸は、化物の体から伸びているものだった。

---

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「パペットマスター」その1
2011-08-26 Fri 23:30
おかげ様で、ブログ開設から数日でアクセスカウンターが600を超え。
ブログを開設した本人が、思わず勢いにびっくりしてしまいましたw
これもひとえに見に来られている皆さんのおかげです。
本当にありがとうございます。
そして、今後ともよろしくお願いします!

では気を取り直して。
今回の更新は、以前pixivに投稿したSSの転載一発目になります。
日頃色んな意味でお世話になっている、彗嵐さんの作品「鈴華さんちの不可思議な日常」から設定をお借りし、終始ノリノリで書かせていただきました。
その節はありがとうございました。
彗嵐さんの作品をお借りして、またSSを書く機会を虎視眈々と狙っていますが、それはまた別の機会に。
それでは、開始です。

---

「パペットマスター」その1

遡ること数日前、彼女の元に失踪した女性を探して欲しいという依頼が美影の元に舞い込んだ。
失踪した女性の名前は糸田胡桃。
学校で教師をしている。
今回の依頼人は、失踪した教師が担任しているクラスの生徒達だった。
最後の目撃情報は、一週間前に学校から出ていく姿を教師や生徒が見ている。
それ以来、学校にも自宅にも現れず行方不明になっている。
美影は数日間の調査で、最近この町で失踪事件が何件も起こっていることを知り、事件現場を調べると、どの現場にも憑神の魔力を帯びた糸や木片が落ちていたことに気付いた。
失踪した人々の足取りを調べると、町外れに最近オープンしたパペットハウスに行った後に行方不明になっていることが判った。
そして、店の店主は探している糸田胡桃にそっくりな女性・・・。
その情報を確かめる為に、美影は深夜のパペットハウスへ侵入することを決めたのだった。

---

「ここやな・・・」
美影は暗く静まり返った店の前に着く。
「まずは鍵を開けな・・・」
彼女はお札を一枚取り出し、入り口の鍵穴に貼り付ける。
貼りつけたお札が鍵穴の中に吸い込まれ、鍵穴にピッタリ合う鍵の形に変化する。
「これで良し。ほな、お邪魔するで~」
鍵を回すとカチャッと音が鳴り、美影はドアを開け店の中へ入っていく。
「流石に真っ暗で何も見えんわ。灯り灯りっと」
手に持っていた錫杖を前にかざすと、錫杖の先がぽうっと光り、周囲を淡く照らす。
「うわー・・・。凄い数の人形やな」
周りにはマリオネット人形以外にも様々な人形が飾られていて、美影は物珍しさからついつい物色をし初める。
「あ!、このネズミの人形とか猫乃が喜びそうやなー。それにこのバレリーナみたいな人形めっちゃかわええわぁ~」
人形の物色に夢中な中、奥の方でカタカタと物音がしたことに気付き、美影ははっと我に返る。
「あかんあかん!、こんなことしてる場合ちゃうし。それに、今の物音は・・・」
そう言って錫杖を部屋の奥の方へ向けてかざし、目を細めてその先を見る。
「物音はあのカウンターの方からやな」
美影は周りを警戒しながらカウンターに近付いていくと、カウンターの裏に通路が続いていることに気付く。
「通路か・・・」
通路の入口の周りを錫杖の灯りで照らし、異常がないことを確認する。
「異常無しっと。ほんならいくで」
美影はカウンターに近づく時よりも一層周りを警戒しながら通路に入っていく。

---

通路には、店に飾りきれなかったと思われる人形が並んでいる。
そして、通路の先にぼんやりとだが灯りが見える。
その灯りに向かって進んでいくと、ドアからうっすらと灯りが漏れている部屋に辿り着いた。
美影はドアの隙間から部屋の様子を伺うと、部屋の奥に人影らしきものが見えるが、はっきりとは確認できない。
「んー。もうちょいで見えるんやけど・・・」
美影は慎重にドアの隙間を広げる。
「なんや、人影に見えたんわでっかい人形やん。それも何体もある・・・ん?」
人影だと思っていたものは、人間サイズの人形だった。
美影は人形が気になり、無意識にドアに体重をかけてしまい、勢い良く部屋に倒れこんでしまった。
「いったぁ~!、このっオンボロドア・・・」
ドアに悪態をつきながら美影は起き上がり、部屋を見渡す。
「人形を作る作業場みたいやな。でも、灯りが付いてるのに部屋には誰もおらへん」
部屋に人の姿は無く、愛らしい造形の人形達と、様々な工具が有るだけだった。
「誰か戻ってくる前に・・・」
美影はそう呟くきながらドアを閉めた後、人間サイズの人形の方へ駆け寄り、人形の顔を凝視する。
「やっぱり。この人形、失踪した人にそっくりやん!?、それにこっちも。これもや・・・」
部屋に飾られている人間サイズの人形は全て、失踪した人々の面影があるものだった。
「失踪した人が人形にされてるんやったら、これは間違いなく憑神の仕業で決まりやな。でも、肝心の先生の人形が見当たらへんってことは・・・」
部屋を何度も見渡すが、糸田胡桃の面影のある人形だけは見つからなかった。
「ふぅ。見つからんもんはしゃーないな。とりあえず、ここに有る人形だけでも持ちださんと」
転送用のお札を取り出し、人形へ貼り付けようとした時、ドアの方から怒声が飛ぶ。
「ちょっと!、そこで何をしてるの!?」
「あちゃー。人が戻ってきてもうたか」
美影が声が聞こえてきた方に振り向くと、部屋の入口に糸田胡桃にそっくりな女性が立っていた。

---

「もうお店は閉店してるのよ!、それに、ここは大切な作業場です。早く出ていって!」
女性は美影に怒声を浴びせる。
「まぁまぁ、落ち着き。ウチの名前は鈴華美影。あんたを探しにここに来たんや」
美影は笑って誤魔化しながら、彼女に話しかける。
「私を探しに?」
「そ。あんたがここの店主さんやろ?」
「ええ」
「そして、あんたの名前は糸田胡桃。一週間前から行方不明の教師。そのはずのあんたが、何でこの店の店主なのか・・・」
「そ、それは・・・」
反論しようとした彼女の言葉を遮るように、美影は手に持っている錫杖を彼女の方に向ける。
「あんたが憑神やからや!」
錫杖の先が光り、その光りに照らされた彼女の瞳の瞳孔は勾玉の形をしていた。
「くっ・・・、貴様、退魔師か!?」
彼女は錫杖を払い除け、後ろに飛び退ると、美影を忌々しそうに睨む。
「上手く人に化けたつもりでも、ウチの目は誤魔化されへんで!、大人しく退治されるんやな!」
「ふふ・・・。残念だけど、そうはいかないわ。お前もそこの人形達のように、生気を吸い取った後で、私のコレクションに加えてあげる!」
彼女の雰囲気が、美影がよく知る邪悪なものの雰囲気に変わると、彼女の体から黒い煙が吹出し、見る見るうちに彼女自身を包んでいく。

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